ソシオニクスの15の二分法 · 第15軸(リング系の軸)
肯定/否定
判定ルール: 自我・超自我のリング進行がNe→Ti→Se→Fi…またはNi→Fe→Si→Te…なら肯定、Ne→Fi→Se→Ti…またはNi→Te→Si→Fe…なら否定
肯定/否定は、ソシオニクスにある15の二分法のうち15番目、最後の軸です。16タイプを8タイプずつに分けます。
肯定の側は「あるもの・できているもの」から話に入り、状況が何をもたらすかにまず目が向くとされます。
否定の側は「ないもの・欠けているもの」から話に入り、状況で何を失いうるかにまず目が向くとされます。
これは名前から連想される楽観/悲観の軸ではありません。同じ内容を、対象に属する性質で語るか、属さない性質で語るかという、提示の形の軸です。ここでは、両極が何で分かれ、どう違って見え、どう見分けるのかを解説します。引用するのは、この軸を提案したレイニン(Grigory Reinin)と創始者アウシュラ(Aushra Augustinaviciute)の原典です。あわせて、後年の研究者グレンコ(Victor Gulenko)の整理と、検証研究も引用します。
01何で決まるか
どちらの側に入るかは、性格診断の点数ではなく、そのタイプのモデルA(8つの情報要素を8つの位置に並べた図)から決まります。この軸は、プロセス/結果と同じく、リングで分かれる軸です。
- 肯定: ILE・ESE・LSI・IEI・SEE・LIE・EII・SLI
- 否定: SEI・LII・EIE・SLE・ILI・ESI・LSE・IEE
数学の面では、この軸は、外向/内向、直観/感覚、論理/倫理という3つの基本の軸の掛け合わせです。そのため、合理/非合理とは関係なく決まります。
また、互いを補い合うとされる双対関係の2人は、必ず反対の側に分かれます。例えば、ILE(肯定)の双対はSEI(否定)、ESE(肯定)の双対はLII(否定)です。主導機能と創造機能が入れ替わった鏡像関係の2人も、反対の側に分かれます。つまり、この軸は、クアドラの内側で2タイプずつが向かい合う軸です。
02レイニンはどう定義したか
この軸の出どころは、1980年代にレイニンが行った数学の仕事です。レイニンは、ユングに由来する4つの基本の二分法を掛け合わせると、16タイプを8対8に分ける二分法が全部で15本作れることを示しました。
ですが、数学的に軸が作れることと、その軸に心理的な中身があることは別の問題です。レイニンは2005年の著書(英訳2010年)で、この軸を新しい情報への最初の反応として書いています。なお、資料ごとに揺れる訳語(ポジティビスト/ネガティビスト、肯定者/否定者など)は引用の中もこのページの表記に揃え、「肯定/否定」としています(引用の中では「肯定タイプ」「否定タイプ」)。
これは新しい情報に対する反応に従ったタイプの分割である。否定タイプの最初の反応は通常否定的である:「いいえ」。後に、彼/彼女は受け入れたり、何かに同意したりすることがあるが、最初の反応は常に拒絶である。肯定タイプの最初の反応は受容である。(中略)一方の場合は世界の記述を保護する傾向であり、他方の場合は変化させ拡張する傾向である。
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This is a division of types according to their reaction to new information. The negativist's first reaction is usually negative: "No". Later he/she can accept, agree to something, but the very first reaction is always aversion. Positivists' first reaction is acceptance. (中略) In one case it is a tendency to protect the description of the world, in the other – a tendency to change and expand.
言い換えると、否定の側は新しい情報にまず「いいえ」と返し、肯定の側はまず受け入れるということです。第一声が「いいえ」でも、あとから受け入れることはいくらでもあります。つまり、分かれるのは結論ではなく、最初の反応の向きです。
また、レイニンは別の箇所で、この軸と質問/宣言を「外向―内向や合理―非合理よりも、ソシオン内の実験中にずっとよく観察される。日常生活においてさえ、より気づきやすい」部類に数えています。ソシオンは、16タイプがそろった全体のことです。提案者自身は、この軸を観察しやすい軸と見ていたということです。
03アウシュラはどう記述したか
創始者のアウシュラは、1998年の連載でこの軸を扱いました。「特性は最近明らかにされたが、運がよく、かなり豊富な事実材料が現れた」として、観察を4つの見出しで整理しています。
1つ目の見出しは、新しいものへの関係です。まず肯定の側について、アウシュラはこう書いています。
肯定タイプは絶えず新しいもの、興味深いものを探求しており、古いものはすでに退屈だ。あらゆる新しい情報、新しい人物を喜び、熱意をもって受け入れる。これらは新しいものの先駆者である。
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Позитивисты постоянно находятся в поиске нового, интересного, старое уже наскучило, и любую новую информацию, любого нового человека они воспринимают радостно, с энтузиазмом. Это пионеры нового.
つまり、肯定の側は、新しい情報や新しい人をいつも探していて、喜んで受け入れるということです。アウシュラは、この側を「新しいものの先駆者」と呼んでいます。
これに加えて、アウシュラは、両極が人の何を見るかも対比しています。
これに加えるべきは、先駆者─肯定タイプは何においてもまず人々を結びつけるもの、近づけるものを見、保守者─否定タイプは人々を分けるもの、区別するもの、離すものを見ることである。
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К этому следует добавить, что пионеры-позитивисты видят во всѐм, прежде всего, то, что людей объединяет, связывает, сближает. Консерваторы — то, что людей разделяет, отличает, разъединяет.
言い換えると、先駆者である肯定の側は人々を結びつけるものを見て、保守者である否定の側は人々を分けるものを見るということです。
2つ目の見出しは、仕事への関係です。ここに、この軸らしいねじれが出ます。
保守者─否定タイプは仕事において正確さ、精密さで際立っている。そう簡単には誰にも信頼せず、すべてを自分や他者に対してチェックする。(中略)すべてをチェックし精緻化する傾向のため、彼らを「校正者」または「編集者」と呼ぶことができる。
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Консерваторы-негативисты в работе отличаются точностью, прецизионностью. Просто так никому не доверяют, все проверяют на себе и других. (中略) Из-за склонности все проверять и уточнять их можно назвать «корректорами» или «редакторами».
つまり、否定の側は、欠けを見る目が、点検と仕上げの腕になるということです。アウシュラは、この側を「校正者」「編集者」と呼んでいます。
一方、肯定の側は、意欲と勢いで仕事を進めるかわりに、結果のチェックを好まず、仕上げの確認はパートナーに渡すとされます。例えば、新しい機械を買ったとき、否定の側はまず説明書を読みます。肯定の側はまず物を触り、うまくいかなくなってから説明書を開くとされます。
3つ目の見出しで、アウシュラは指導のしかたも論じています。開かれた競争と統率に向かうのは否定の側で、肯定の側の指導は、人々の熱意を管理する形を取る、という仮説です。この主張への批判は、「見分け方と実証研究」で扱います。
4つ目の見出しは、「報告の二つの仕方」です。ここには、この軸について意外な観察があります。
報告では、なされたことについて、なされたすべてを列挙することを忘れずに行うことができる。否定タイプはネガティブな背景上の変化についてそう報告する。すべてはネガティブな背景上で起こるので、なされたことは明確に見え、忘れられない。肯定タイプは別の仕方で報告する。彼らのポジティブな背景上では、なされたことが見えず、それは以前から存在していたものに溶け込む。それゆえ、彼らにはなされなかったこと—欠点、未完成のもの、誤りについて報告する傾向がある。
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Отчитываясь за содеянное и не забывая перечислить все сделанное. Так отчитываются негативисты за изменения на негативном фоне. Все происходит на негативном фоне, поэтому все сделанное отчетливо видно и не забывается. Позитивисты отчитываются подругому. На их позитивном фоне содеянного не видно, оно сливается с ранее существовавшим. Потому у них склонность отчитываться не за содеянное, а за несодеянное. За недостатки, недоделки, ошибки.
言い換えると、進み具合の報告で欠点と未完了を並べるのは、むしろ肯定の側だということです。肯定の側の明るい背景の上では、できたことが周りに溶け込んで見えなくなり、欠けだけが目立ちます。反対に、否定の側の暗い背景の上では、できたことがはっきり浮かび、数えられます。そのため、名前から想像される姿と、報告の場での姿が逆になります。
04行動は何が違うか
では、日常の行動としては何が違って見えるのでしょうか。2000年代に、サンクトペテルブルクの研究グループが、タイプ判定の済んだ被験者を集めて、この軸の表れを観察する検証を行いました。その報告(2003年にロシア語で公開されました)は、両極を次のように書いています。まず肯定の側です。
肯定タイプは、状況の中に在るもの(存在するもの、そこにあるもの)、現実に起こりうること—周囲の世界や状況、可能性、見通しの肯定的な現れとして解釈できるもの—へ最初に注意を向ける。状況や人との接触が自分に何をもたらしうるかへ向かい、何を失いうるかへは向かわない(たとえば引っ越しは、いまの友人を失うことではなく、新しい知り合いや友人を得る機会として見られる)。失敗の回避よりも、成功への方向づけが特徴的である。
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Positivists initially pay attention to what is present in a situation (what exists, what is there) what can realistically occur, what can be interpreted as an affirmative manifestation of surrounding world, situations, possibilities, prospects. Positivists are oriented at what any situation or contact with people can potentially bring to them rather than what they could potentially lose (for example, moving is viewed as an opportunity to gain new acquaintances, friends, rather than primarily from point of view of losing existing friends). For them an orientation to success is more characteristic rather than avoidance of failure.
つまり、肯定の側は、状況や人との接触から自分が何を得られるかに目が向き、失敗を避けるより成功をめざすということです。引っ越しなら、新しい知り合いができる機会として見ます。
次に否定の側です。
否定タイプは、状況の中で不足しているもの・欠けているものの側面へ注意を向ける。状況や接触から何を得られるかではなく、その結果として何を失いうるかに方向づけられる(否定タイプにとって引っ越しは、まず友人を失うことを意味する)。失敗の回避に集中する(「肯定的な」展開とは、これまでのところ何も悪いことが起きていないという事実である)。
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Negativists pay attention to aspects of the situation that are insufficient or lacking, which can be interpreted as seeing the negative prospects of various situations and events. Negativists orient at what they could potentially lose as a result of a certain situation or contact with other people, rather than what this situation or contact can bring to them (for example, moving for negativists primarily means losing friends). Negativists focus on avoiding failures (the "positive" development of a situation is the fact that nothing negative has happened so far).
言い換えると、否定の側は、その結果として何を失いうるかに目が向き、失敗を避けることに集中するということです。否定の側にとっては、何も悪いことが起きていない状態が、良い展開とされます。
同じ報告は、ここから分かれていく違いをいくつも挙げています。要点をまとめると、次のようになります。
- 語りの背景。肯定の側は良い面を語り、問題点も肯定的な背景の上に置く(「たしかに問題だ。でも…」と続けて明るい絵を描く)。否定の側は欠けている面を語り、良い面も否定的な背景の上に置く(「まあ良い。ただ…」と続けて足りないものを挙げる)。
- 指示の出し方。肯定の側は「できること・すべきこと」で指示する(「電話はこの時間になら通じる」)。否定の側は「避けるべきこと・すべきでないこと」から指示する(「その時間に電話しても無駄だ」)。
- 文法の癖。否定の側の発話には否定語(「〜ない」「誰も」「決して」)がよく出る。「否定的な経験が常に必要とは言えない、私には要らない」のような言い回しが自然に出る。
- 経験の消化。肯定の側は起きた出来事をよく覚えて肯定的経験として取り込み、否定的な経験も「良い教訓だった」へ変えようとする。否定の側は起きなかったこと・欠けていたことをよく覚え、そこから結論を引き出す。
報告の注記は、この違いのもとにある考え方を、こう説明しています。
我々の見解では、こうした態度は、この特徴が働くより深い機構の帰結にすぎないと考えられる。ある人々は、ある集合を、それに属する性質を通して知覚し記述し(肯定タイプ)、別の人々は、それに属さないものを挙げてその集合を記述する(否定タイプ)。(中略)肯定タイプの評価は楽観的で、否定タイプの評価は悲観的だという表面的な印象は、まさにここから生じる。実際には、どちらも、(ふつうの意味での)良いことについても悪いことについても同じだけ語りうる。違いは述べ方の形にある—たとえば欠点について:「あなたに欠点がないとは言えない」(否定)と「あなたにはいくつか欠点がある」(肯定)。
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In our opinion, these attitudes are a consequence of a deeper mechanism: one group perceives and describes something by denoting associated properties (Positivists) while the other group denotes properties that are not associated with it. (中略) The cursory impression of optimism/pessimism being the distinguishing feature of this dichotomy occurs because of this. In reality, both Positivists and Negativists possess these two attitudes and talk equally of "good" and "bad" things. The difference is in the form of presentation—for example, on the same topic of shortcomings: "I cannot say that you have no shortcomings" (negativism) and "You have several shortcomings" (positivism).
上の引用の最後にある2つの言い方は、同じ欠点という主題を、否定の側と肯定の側がそれぞれの形で言ったものです。内容は同じで、形だけが逆です。つまり、両極とも良いことと悪いことを同じだけ語り、違うのは言い方の形だけだということです。この一対が、この軸のいちばん小さな見本です。
被験者の発言例には、道案内までこの形になる例が採録されています。「建物が見えてくるが、それは探しているものではない。その先に通りが見えるが、そちらへは行かず、道なりに進む。建物を回り込んで、最初の2つの入り口は使わない」。このように、否定の側の道案内は、通らない道と使わない入り口の列挙で組み立てられます。
ほかにも、次のような発言例が採録されています。
- 肯定の側: 「まず人を信頼するところから始めて、そこから調整していく」
- 否定の側: 「機嫌が良すぎるときは、何かがおかしい」「たいてい悪い知らせを持ってくるのは私だ」
05相手からどう見えるか
二分法では、反対の側が「欠点のある自分」のように見えることがあります。この軸でも、互いの印象はすれ違うとされます。
肯定の側から否定の側を見ると、何を提案しても第一声で「いや」と返し、話に水を差す人に見えることがあります。検証グループの報告も、欠点ばかり指摘する人の話に苛立つ、と記録しています。
反対に、否定の側から肯定の側を見ると、リスクを数えず、「なんとかなる」で人を巻き込む人に見えることがあります。否定の面を考えないように見える話しぶりへの苛立ちも、同じ報告に記録されています。
ですが、どちらも同じ現実を見て、提示の形が逆なだけです。「いいえ」から入る人が反対しているとは限らず、「いいね」から入る人が賛成しているとも限りません。
後の研究者のグレンコは、この軸を思考のしかたとしても整理しました。
知的レベルでは、肯定─否定の二分法は、対象の比較における類似の識別か、相違の識別かとして現れる。否定タイプの思考過程では対比が優勢であり、肯定タイプでは比較が先導する。つまり肯定タイプは、内部の区分に立ち入らずに、対象の全体像を保持しやすい。逆に否定タイプは、その両極の分離点と対立する対比を識別しやすい。
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At this level, the Positivism–Negativism dichotomy manifests as identification of similarities or differences in object comparison. In Negativists thought processes prevails contrast, in Positivists leads comparison. Meaning that Positivists more easily hold overall views of an object, without considering its internal divisions. Conversely, Negativists more easily distinguish its extreme points of separation and opposing contrasts.
言い換えると、肯定の側は似ているところから対象をつかみ、否定の側は違うところから対象をつかむということです。そのため、肯定の側は対象の全体像を保ちやすく、否定の側は対立する点を見つけやすいとされています。
グレンコは、これを、認知心理学者のギルフォードが立てた2つの思考の対にも重ねています。
- 収束的思考: 1つの正解へ絞り込む思考。肯定の側に対応する
- 発散的思考: 同じ問題に複数の解を出す思考。否定の側に対応する
また、この違いは、集団のまとまり方にも表れるとされます。肯定の側は距離を詰めて一体感を作りやすく、まとまりの中心が1つの構造になります。一方、否定の側は距離を保って対抗の軸を立てやすく、中心が複数の構造になります。例えば、気立ての良いタイプとされるSEIも否定の側です。グレンコは、SEIが自分の小さな集団をほかの小さな集団と対比して、意図せず全体の一体感を崩すことがある、と書いています。
さらに、グレンコは、この軸を人を信頼するときの出発点としても描いています。肯定の側にとって、人間の本性はまず善で、他人が善であるかのようにふるまいます。一方、否定の側は条件が良くても最悪を見込んでおき、他人への信頼の度合いはずっと低い、とされます。
グレンコは、身振りについての観察も書いています。口元に手を当てるといった、批判的な態度を示す「閉じた身振り」は、内向ではなく否定の側の特徴として説明するほうがよいという観察です。
また、この軸は、双対の2人が必ず反対の側に分かれる軸です。グレンコは、否定の側にたまった緊張が肯定の側との接触で解き放たれ、カタルシスに至る、という補い合いの読みを添えています。つまり、「いいえ」から入る人のそばに「まず受ける」人がいる配置は、モデルの上では欠点ではなく、かみ合わせとして描かれているということです。
06見分け方と実証研究
見分けるときに実際に使える手がかりは、次の4つです。
- 第一声。新しい提案への最初の反応が受容か、「いいえ」か(結論ではなく最初の一拍を見る)。
- 指示と道案内の形。「こうすれば着く」で組み立てるか、「そっちへは行かない」で組み立てるか。
- 否定語の頻度。「〜ないとは言えない」のような二重否定を含め、否定の構文がどれだけ自然に出るか。
- 引っ越しや転職の語り方。得るものから話が始まるか、失うものから始まるか。
グレンコは、座る位置の取り方についての観察も書いています。否定の側は相手の正面に、肯定の側は横や斜めに位置を取ると話しやすいとされます。グレンコの説明では、これは、夫婦カウンセリングで対立する2人を隣り合わせに座らせて緊張を和らげる技法に対応します。
ただし、この軸を単独のテストで測ろうとした研究は、否定的な結果を出しています。心理学者のタラノフ(Viktor Talanov)は2003年、合計1,800人を超える大きな標本で、基本の4軸とレイニンの派生の11軸をまとめて検定しました。
我々のシリーズの6つの実験のいずれにおいても、レイニン特徴に心理学的内容は検出されなかった。すべての実験において、レイニン特徴の心理学的な内容的充実の確からしさに関して、帰無仮説が裏づけられた。
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Ни в одном из 6-ти экспериментов нашей серии у признаков Рейнина не выявлено психологического содержания. Во всех экспериментах в отношении вероятности психологического содержательного наполнения признаков Рейнина подтвердилась нулевая гипотеза.
上の引用にある帰無仮説は、統計で「関連はない」とする仮説のことです。つまり、6つの実験のどれでも、レイニン特徴(派生の11軸)に心理的な中身は確かめられなかったということです。
肯定/否定も、職業選択(1,446人)との関連、質問紙240問との相関のどちらも、偶然のばらつきと区別できる水準には達しませんでした。基本の4軸との差は、下の図のとおりです。
タラノフの実験(2003年・447人)。点線(0.91)を下回る値は、偶然のばらつきと区別できない。
数値はタラノフ「レイニン特徴の実験的研究」(2003年、ソシオニクス新聞 №07-08)表3より
この軸には、名前を挙げての直接の検定もあります。タラノフの第5実験は、「質問紙の中立的な質問に『はい』とより多く答える傾向」と、タイプから計算した肯定/否定が一致するかを調べました。この傾向は、同意しやすさを実際に測った値です。
その結果、素点の平均でも補正後の値でも、相関の絶対値は0.05を超えず、統計誤差の範囲でした。仮にその値が正しいとしても、実測の同意傾向とこの軸が共有する分散は0.25%にしかならない、と原文は付け加えています。つまり、「はい」と答えがちな人が肯定の側、という素朴な対応は、実測では成り立ちませんでした。
また、タラノフは同じ論文でペテルブルクの検証グループの観察研究についても、「仮説を精緻にする仕事ではあるが、検証にはまだ着手すらしていない」と評しています。言い換えると、観察研究は仮説を細かくしただけで、確かめる段階にはまだ入っていないという評価です。「行動は何が違うか」で大きく引用した報告は、まさにこの評価の対象です。
批判は、提案者たちの記述そのものにも向けられています。アウシュラには、「真の独裁者は否定タイプである者だけでありうる」という主張があります。「アウシュラはどう記述したか」で触れた指導のしかたの議論の延長にある主張です。2002年の批判論文は、この主張について、「何によっても裏付けられていない。彼女自身、有名人の表のなかに反例をいくらでも挙げていた」と指摘しました。
これに応じる中で、レイニンは、この軸に限らず「組合せは構築の形式論であって、特徴の意味論とは何の関係ももたない」という原則を繰り返しています。つまり、数学的に軸が作れることは、その軸の中身を保証しないということです。
まとめると、この軸は、質問紙で測れる性格の強さとしては確認されず、「はい」と答える傾向との対応も否定されました。一方、原典と観察報告は、同じ内容を在るもので語るか、欠けで語るかという、提示の形を記述しています。そのため、判別に使うなら、前向きかどうかではなく、第一声と道案内の形を観察する必要があります。
07使うときの注意
最後に、この軸を使うときの注意を3つにまとめます。
名前で判定しないこと。肯定/否定は、楽観/悲観の軸ではありません。「行動は何が違うか」で見た検証グループの注記のとおり、両極とも良いことと悪いことを同じだけ語り、違いは提示の形にあります。
しかも、「アウシュラはどう記述したか」で見たとおり、進み具合の報告の場で欠点と未完了を並べるのは、むしろ肯定の側だとされます。そのため、「ネガティブな発言が多い人」という印象だけで否定の側と判定すると、報告の場ではちょうど逆を拾うことになります。また、アウシュラが否定の側を「保守者」と呼んだのも、政治的な保守ではなく、新しい情報への構えの話です。
この軸だけでタイプを決めないこと。肯定/否定は、タイプから導かれる15軸の1つです。逆に、この軸1つからタイプは決まりません。8タイプずつの大きなまとまりです。しかも、第一声の「いいえ」は、疲れや警戒でも出ますし、リスク管理の仕事のような職業上の訓練でも変わります。
実証の水準を混ぜないこと。「見分け方と実証研究」で見たとおり、この軸には、大規模な質問紙で否定的な検定結果があります。また、「はい」と答える傾向と直接照らし合わせた結果も、一致しませんでした。提案者の側の記述にも、批判で崩れた主張(独裁者の主張)が含まれています。原典の記述と観察報告は読み物として豊かですが、統計で確認された性質として引用できる段階にはありません。
08両極のタイプ一覧
両極の8タイプずつを、一覧で再掲します。この軸は、双対の2人が必ず両側に分かれ、各クアドラの中で2対2に分かれる並びです。自分のタイプがどちらに入っているかを確かめたら、提示の形と第一声に、心当たりがあるかを照らし合わせます。道案内を「行く道」と「行かない道」のどちらで組み立てるかも、日常で使える手がかりです。合わないと感じたら、それはタイプの判定そのものを見直す手がかりにもなります。1つの軸だけでなく、複数の軸で照らし合わせるのが、二分法の確かな使い方です。
引用索引
本文で引用した出典を、登場した順にまとめます。引用の日本語は原文から訳出したものです。
- [1]グリゴリー・レイニン『Socionics: Typology. Small Groups.』(2010)第III部 本文へ
- [2]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第2部(№2)(1998年) 本文へ
- [3]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第2部(№2)(1998年) 本文へ
- [4]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第2部(№2)(1998年) 本文へ
- [5]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第2部(№2)(1998年) 本文へ
- [6]Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」(コミュニティ編纂、2026-09-01閲覧) 本文は英語ページからの訳出。2007年公表のサンクトペテルブルク検証グループ報告の英訳 出典リンク 本文へ
- [7]Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」(コミュニティ編纂、2026-09-01閲覧) 本文は英語ページからの訳出 出典リンク 本文へ
- [8]サンクトペテルブルクのソシオニクス作業グループ『レイニン特徴の中身: 実地研究の結果』(原題:Наполнение признаков Рейнина: результаты практических исследований、2003) 「肯定/否定」の節 露語の報告。公開元の dynamicsocionics.ru は閉じており、Internet Archive の写しで読める。英訳は Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」 出典リンク 本文へ
- [9]ヴィクトル・グレンコ「思考の諸形式」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 №4(2002年) 引用は英訳からの重訳 本文へ
- [10]ヴィクトル・タラノフ「レイニン特徴の実験的研究」『ソシオニクス新聞』誌 №07-08(2003年) 本文へ
