ソシオニクスの15の二分法 · 第10軸(機能配置系の軸)
戦術/戦略
判定ルール: 第1が直観(Ne・Ni)または第2が感覚(Se・Si)なら戦術、第1が感覚(Se・Si)または第2が直観(Ne・Ni)なら戦略
戦術/戦略は、ソシオニクスにある15の二分法のうち10番目の軸です。16タイプを8タイプずつに分けます。
戦術の側は目標そのものより手段と道筋に焦点を合わせ、いま目の前の状況にどう対処するかに強いとされます。
戦略の側は個別の一手より目標と全体の把握に焦点を合わせ、先の展開に向けて構えるとされます。
どちらが計画的か・優秀かという評価の軸ではなく、意識が「道」と「目的地」のどちらに固定されるかの軸です。戦術と戦略という語は軍事から来ていますが、戦いの上手さや勝負強さの話でもありません。ここでは、両極が何で分かれ、どう違って見え、どう見分けるのかを解説します。引用するのは、この軸を提案したレイニン(Grigory Reinin)と、創始者アウシュラ(Aushra Augustinaviciute)の原典、それに後の検証研究です。
01何で決まるか
どちらの極に入るかは、性格診断の点数ではなく、そのタイプのモデルA(8つの情報要素を8つの位置に並べた図)から決まります。判定に使うのは、自我ブロックにある知覚の要素(直観と感覚)の位置です。
- 主導機能(1番)が直観(Ne・Ni)、または創造機能(2番)が感覚(Se・Si) → 戦術(ILE・IEE・ILI・IEI・LSE・ESI・LSI・ESE)
- 主導機能(1番)が感覚(Se・Si)、または創造機能(2番)が直観(Ne・Ni) → 戦略(LIE・EII・LII・EIE・SLE・SEE・SLI・SEI)
数学的には、この軸は、直観/感覚と合理/非合理という2本の基本の軸を掛け合わせたものです。直観の非合理タイプと感覚の合理タイプが戦術になり、感覚の非合理タイプと直観の合理タイプが戦略になります。例えば、同じ非合理の外向タイプでも、Ne主導のILEは戦術、Se主導のSLEは戦略です。
02レイニンはどう定義したか
この軸の出どころは、1980年代にレイニンが行った数学の仕事です。レイニンは、ユングに由来する4つの基本の二分法を掛け合わせると、16タイプを8対8に分ける二分法が全部で15本作れることを示しました。ですが、数学的に軸が作れることと、その軸に心理的な中身があることは別の問題です。
なお、資料の訳語(戦術家/戦略家、戦術型/戦略型)は、引用の中もこのページの表記に揃えています。引用の中では「戦術タイプ」「戦略タイプ」です。レイニンは2005年の著書(英訳2010年)で、この軸を、人をどう助けるかの違いとして書いています。
この特性は人々の関係性の中で明白になる。戦術タイプは即時的な支援を提供する能力があり、戦術について助言したり短期的な財政支援を提供したりできる。彼らは特定の状況における実践的行動について助言できる。彼らは、あなたが彼らの助言を使ったかどうかを確認するために決して確認しに来ない。戦略タイプは戦略的助言を与える傾向があり、彼らはエネルギーと時間を提供する。彼らは妥協の領域においてはそれほど柔軟ではない。彼らは状況を一目で全体として把握できる。
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This attribute becomes evident in people's relationships. The tacticians are capable of providing immediate support, they can advise on tactics and give short-term financial support. They can give advice on practical behavior in specific situations. They never check up on you to see if you have used their advice. The strategists are inclined to give strategic advice; they offer their energy and time. They are not as flexible in the area of compromise. They can grasp a situation as a whole at the first glance.
言い換えると、戦術の側からは「今この場をどうするか」の助言と支援が来て、戦略の側からは「状況全体がどこへ向かうか」の助言が来るということです。アウシュラも同じ点について、戦略の側はほかの人がお金を分け与えるように自分の時間と潜在エネルギーを分け与える、と書いています。
レイニンは、この軸の研究状況についても率直に書いています。
この特性はあまり研究されていない。私はこの分割が、タイプの物質的対象に対する態度に基づいてなされていると考える。戦術タイプは対象の操作によって特徴づけられ、戦略タイプは予見、配慮、経験の蓄積、すべてに備えたいという欲求によって特徴づけられる。これは、ところで、「戦略家」と「戦術家」という用語のセマンティクスに非常によく対応している。
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This attribute is poorly studied. I think that this division is made on the basis of the type’s attitude to material objects. The tacticians are characterized by manipulation with objects; the strategists – by foresight, care, accumulation of experience, desire to provide for everything. This, by the way, corresponds to the semantics of the terms "the strategist" and "the tactician" quite well.
つまり、この分け方は物への接し方から来ているということです。戦術の側は物を扱って動かすことに、戦略の側は先を見て備え、経験を蓄えることに特徴があります。
また、15本の中には、主観主義/客観主義の旧称「陽気/深刻」のように、名前が中身とずれる軸があります。この軸については、レイニン自身が名前と中身がよく合っていると認めています。
03アウシュラはどう記述したか
創始者のアウシュラは、1998年の連載でこの軸を長く扱い、両極に呼び名まで付けています。戦術の側は「庇護者」で、芸術家を支えた古代ローマの人物マエケナスにちなむ呼び名です。戦略の側は「外交官」、あるいは「主人(家政の主)」です。
まず、戦術の側がどう助けるかについて、アウシュラはこう書いています。
彼らの支援は今この瞬間のもの、助言はこの具体的状況でどう行動するかについてのものである。その際、彼らはこの支援がどう用いられるか、求められたことに用いられるかについての報告を要求しない。
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Их помощь — сиюминутная, советы — о том, как действовать в данной конкретной ситуации. При этом они не требуют отчета, как эта помощь будет использована и на то ли, на что просят.
言い換えると、戦術の側は助けは出すものの、それがどう使われたかは追わないということです。レイニンの「決して確認しに来ない」と同じ観察です。
アウシュラは、どちらの極に何を頼むかの使い分けも書いています。
戦術タイプ・庇護者には、素早い助言や支援が今すぐ必要な場合に求める。戦略タイプ・外交官には、特別な準備や状況の研究なしに、いわば一気に状況全体を理解し、未来への助言を得たい場合—この状況から近い未来に何が発展するか、近い未来にどんな行為、感情、力の変化を期待できるかについて—に求める。
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К тактикам-меценатам обращаются, когда быстрый совет или помощь нужны сразу, сейчас же. К стратегам-дипломатам — когда нужно без особой подготовки и изучения ситуации, как бы с ходу разобраться в ситуации в целом или получить совет на будущее, прояснить картину того, что из данной ситуации разовьется в скором будущем, каких поступков, эмоций или изменения сил можно ожидать в скором будущем.
つまり、今すぐの助けが要るときは戦術の側に、状況全体の見通しと先の助言が要るときは戦略の側に頼むということです。戦略の側は、特別な準備をしなくても、状況全体を一度に理解できるとされています。
さらにアウシュラは、お金と情報の扱いにも両極の型を見ています。戦略の側には、物質的な資源を計画的に蓄える傾向があるとされます。支出は前もって決まっていて、誰が何を持っているかの勘定を欠かしません。一方、戦術の側は蓄えることに向かず、そのぶん気前よく助ける側になるとされます。そのため、同じ「お金がない」という言葉の中身まで違ってきます。
戦略タイプ・外交官が「お金がない」と言うとき、それは特定の物の購入のためのお金がないこと、全資本が貯蓄銀行にあること、大きな札を崩したくないことを意味することがある。戦術タイプ・庇護者が同じことを言えば、それは通常、ポケットに1ルーブルもない、借りる相手もいないことを意味する。
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Если стратег-дипломат говорит, что у него нет денег, это может означать, что их нет на покупку какой-то определенной вещи, что все его капиталы в сберкассе или не хочется разменять большую купюру. Если тактик-меценат говорит то же самое, это обычно означает, что не только рубля в кармане нету, но и одолжить негде.
言い換えると、戦略の側の「お金がない」は蓄えはあるが今は崩したくないという意味で、戦術の側の「お金がない」は本当に手元にお金がないという意味だということです。
情報の扱いも対照的です。戦略の側は、情報が確かかどうかと出どころの質に慎重です。便覧で調べられることは人に尋ねず、学位や証明書のような形で自分の知識を公式なものにしたがるとされます。また、新しいアイデアに惹かれやすく、問題から問題へ簡単に移るため、関心の広さや百科事典のような博識で目立つとも書かれています。「前衛主義者」と呼ぶ者もいます。
逆に、戦術の側は、真理に近づける情報源ならどれも避けず、知識をわざわざ公式なものにする必要を感じないとされます。成功の語り方も逆です。
外交官が何かで「ずる賢く立ち回る」ことができれば、必ずそれを利用し、必ず自慢する。自慢する相手がいなければ—面白くない。(中略)庇護者は逆に、ずる賢さと受け取られかねないものすべてに、なぜか居心地の悪さを覚える。それゆえ双対との接触で自分の不運、無才能、不成功などを嘆く。同じ仕方で、戦略タイプ・外交官は嘆くことを自分に許さない(あるいはできない)。
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Если дипломат способен где-то «схитрить», то непременно этим воспользуется и обязательно похвастается. Если хвастать некому — неинтересно. (中略) Меценатов, наоборот, все, что может быть воспринято как хитрость, почему-то ставит в неудобное положение. Потому в контакте с дуалом они ноют о совей неудачливости, бесталанности, безуспешности и т. п. Ровно таким же образом стратеги-дипломаты не позволяют себе (или не могут) ныть.
つまり、うまくやった話を自慢するのが戦略の側で、うまくいかない話をこぼせるのが戦術の側だということです。
アウシュラは、この2つを双対関係の分担としても描いています。新しい問題や必要を先に言い出して広めるのは戦略の側で、その主導権は、後の段階で戦術の側の手に渡ります。新しいアイデアを広めるのは戦略の側ですが、損得を離れて本気で飛び込めるのは戦術の側だ、という釣り合いです。
04行動は何が違うか
では、日常の行動としては何が違って見えるのでしょうか。2000年代に、サンクトペテルブルクの研究グループが、タイプの判定が済んだ被験者を集め、この軸がどう表れるかを観察して検証しました。報告は2003年にロシア語で公開されました。この報告は、この軸の中心を、「目標」と「道筋」のどちらが固定されるかに置いています。まず戦術の側です。
戦術タイプは、現在の状況・直近の行動・実際の選択肢に注意を向ける。言い換えれば、その連なりが導く先の目標よりも、自分の進む道筋、出来事の連鎖の側に向いている。原則として、到達したい単一の「点」—つまり目標—を自分のために固定しない。したがって、進んでいる方向は変わりうる。
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Tactical types focus their attention on their current situation, on the nearest action, on the actual choices—in other words, they are more oriented at their course, the chain of events, instead of the goal towards which this chain may lead. As a rule, they do not "fix" for themselves a single "point" which they want to hit or reach—in other words, a goal. Thus, the direction in which they are moving is liable to change.
言い換えると、戦術の側は今の状況と次の一手に目を向け、行き着く先の目標は決めておかないということです。そのため、進む方向は変わりえます。
次に戦略の側です。
戦略タイプは、到達したい「点」—行動の目標そのもの—に注意を向け、行動や出来事の側には向けない。原則として進路—目標へ至る具体的な行動の連なり—を固定しない。したがって、目標へ向かう「軌道」は変わりうる。自分の行動と選択を、望む目標へどれだけ近づくかの観点から評価し、選択を迫られたときには、近づかない選択肢を捨てる。
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Strategic types focus their attention on a "point" they wish to reach, i.e. on the goal of their actions instead of the actions and events themselves. Strategists, as a rule, do not fix their direction i.e. concrete actions the sequence of which leads to the goal. Thus, their "trajectory" by which they move towards fulfilling their goals can change. They assess their actions and choices from the point of view of how closer they bring them to their desired objectives (goals). Being put before a choice, they reject those options that do not bring them closer.
つまり、戦略の側は行き着きたい目標に目を向け、そこへ行く道筋は決めておかないということです。そのため、目標へ向かう道のほうが変わりえます。どの選択肢が目標に近づくかで判断し、近づかないものは捨てます。
報告は、この違いをこう要約しています。
この集団を理解する鍵は「目的/目標—方法/道筋」の二分にある。戦略タイプの意識はより大きく目的そのものに向けられ、それを達成する過程で取られる行動には向けられない。一方、戦術タイプの意識は主として道—実際の行動(「歩み」)—に集中し、その最終目標には向かない。(中略)一般的なレベルでは「基準点」の違いについて語ることができる。固定された目標に合わせて進路が修正されるか(戦略タイプ)、進路の側が固定され目標が変わるものになるか(戦術タイプ)である。
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The key element in understanding this group is the dichotomy of "goal/purpose—method/pathway". The consciousness of the Strategist is to a larger degree orientated towards the goal/purpose itself and not towards the actions undertaken in process of achieving it, while the consciousness of the Tactician is largely focused on the path i.e. the actual actions ("steps") but not their end goal. (中略) On a general level it is possible to speak about a difference in "reference points": either the course is corrected in accordance to some fixed goal (Strategist) or the course becomes fixed and goals become variable (Tactician).
上の引用にある「基準点」は、動かさずに固定しておくもののことです。言い換えると、戦略の側は目標を固定して道を動かし、戦術の側は道を固定して目標を動かすということです。固定されるものと動かせるものが、両極で正反対です。
同じ報告から、ここから分かれる違いをまとめると、次のようになります。
- 目標の立て方。戦術の側は、意識的には目標を立てない(状況に迫られたときだけ立てる)。遠い将来の大きな目標は避ける(「なぜ計画を?その時まで生きていなければならないのに」)。戦略の側は、意識的に目標を立て、いったん立てた目標を消すことが難しい。複数の目標は順位をつけて並べる。
- 過去の見方。戦術の側は、起こりえた別の展開を、実際の展開と同じ重さで感じ、「別の道もあった」と分かれ道を数える。戦略の側は、現在へ至る「鍵となる瞬間」を強調し、実現した展開を特別に扱う。
- 達成の後。戦術の側は、目標に着くと空しさや失望を感じることがある(道が途切れるため)。戦略の側は、達成に満足を感じる。逆に、意識できる目標がないと、何かが欠けている・人生が不完全だという不快を感じる。
- 語彙。戦術の側の話には「道」「手段」「方法」がよく出て、行動の目的は「必要」「夢」「関心」「課題」などの語に置き換わる。戦略の側は「目標」「狙い」をはっきり語り、別の言葉に置き換えない。
報告の仮説の節は、戦術の側の「達成の後の空しさ」をこう説明しています。目標に着くと、それまで進んでいた道が途切れます。「自分の道を進んでいる」あいだの確かさと落ち着きが消え、望んでいた目標であっても、次に何をどう進めればいいのか分からなくなることがあります。道のほうが目標より大事だから、という説明です。計画を重んじる合理タイプの戦術の側では、この失望がいっそう強くなるとされます。
被験者の発言も対照的です。戦術の側は、次のように語っています。
- 「大きな一つの目標は見えない。小さな目標の鎖なら見える」
- 「もし最終目標を立てていたら、死んでいた!そんなものは私には存在しない」
一方、戦略の側は、次のように語っています。
- 「私は自分の目標の奴隷だった」
- 「人生には目標がなければ—でなければ何のために?」
- 「人生でやり遂げたいことのリストが35項目ある」
このように、戦術の側の発言は目標を持たないことの気楽さを、戦略の側の発言は目標が生き方の中心にあることを語っています。
05相手からどう見えるか
二分法では、反対の側が「欠点のある自分」のように見えることがあります。この軸でも、おたがいの印象はすれ違うとされます。
戦略の側から戦術の側を見ると、目標がなく、方向が変わり、流されていく人に見えることがあります。反対に、戦術の側から戦略の側を見ると、1つの目的地にこだわり、道中の選択肢を捨てる人に見えることがあります。
これは怠けと頑固のぶつかり合いではなく、固定する場所の違いです。戦術の側の「方向転換」は道を大事にした結果で、戦略の側の「こだわり」は目標を大事にした結果です。達成の後の空しさと、目標がないときの不全感は、同じ違いの表と裏と読めます。
また、この軸は、双対の2人が必ず反対の極に分かれる軸です。アウシュラの記述では、両極は補い合う分担として描かれていました。新しい問題を先に掲げるのは戦略の側で、その実現に飛び込むのは戦術の側です。今すぐの助けは戦術の側から、先を見た助言は戦略の側から来ます。すれ違いが出るのは、この分担を「相手の欠点」として読むときです。
06見分け方と実証研究
見分けるときに実際に使える手がかりは、次の4つです。
- 目標の語り方。「これからどうしたい?」と聞いたとき、目的地(なりたい状態)が返ってくるか、道筋(今やっていること・次の一手)が返ってくるか。検証グループの語彙の観察では、戦略の側は目標をはっきり言葉にし、戦術の側は目標の位置に「必要」「関心」「課題」を置く。
- 過去の語り方。人生を振り返ってもらうと、「鍵となる瞬間」を数える語りになるか、「ああもなりえた」と分かれ道を数える語りになるか。
- 情報源の扱い。調べれば分かることを人に聞くのを避け、知識を学位や資格の形で整えたがるか(戦略の側)、出どころを選ばずに拾い、公式なものにすることへの関心が薄いか(戦術の側)。「アウシュラはどう記述したか」の章で見た、「便覧で見られるなら、決して他人に尋ねない」という記述に対応する観察点です。
- 言い切りの強さ。戦術の側は「そう思う」「私の意見では」と意見の形で伝え、戦略の側は「知っている」「確信している」「疑わない」と語る。
最後の言い切りの強さは、アウシュラが書いた観察です。戦術の側は、事実を語るときでさえ、「正確か」と問われれば「そう思う」と答えるとされます。アウシュラによれば、この柔らかさそのものが戦術の側の手段で、言い切りは戦略の側のまっすぐさの表れです。
ただし、この軸を単独のテストで測ろうとした研究は、否定的な結果を出しています。心理学者のタラノフ(Viktor Talanov)は2003年、合計1,800人を超える大きな標本で、基本の4軸とレイニンの派生の11軸をまとめて検定しました。
我々のシリーズの6つの実験のいずれにおいても、レイニン特徴に心理学的内容は検出されなかった。すべての実験において、レイニン特徴の心理学的な内容的充実の確からしさに関して、帰無仮説が裏づけられた。
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Ни в одном из 6-ти экспериментов нашей серии у признаков Рейнина не выявлено психологического содержания. Во всех экспериментах в отношении вероятности психологического содержательного наполнения признаков Рейнина подтвердилась нулевая гипотеза.
上の引用にある帰無仮説は、「測ったものどうしに関連は無い」とする仮説のことです。つまり、6つの実験のどれでも、レイニンの特徴に心理的な中身は見つからなかったということです。
戦術/戦略は、職業選択(1,446人)との関連も、質問紙240問との相関も、偶然のばらつきと区別がつくほどの強さはありませんでした。基本の4軸との差は、下の図のとおりです。
タラノフの実験(2003年・447人)。点線(0.91)を下回る値は、偶然のばらつきと区別できない。
数値はタラノフ「レイニン特徴の実験的研究」(2003年、ソシオニクス新聞 №07-08)表3より
340問版の検定でも、同じ構図でした。この軸は直観/感覚と合理/非合理の掛け合わせなので、連続した値としても計算できます。それでも、相関二乗和は0.27にとどまりました。一方、ソシオニクスの特徴ではない「善意・謙虚—攻撃性・貪欲」という因子は7.28で、レイニンの派生の特徴(0.24〜0.37)よりはるかに強く質問と結びついていました。
タラノフは同じ論文で、ペテルブルクの検証グループの観察研究についても、「仮説を精緻にする仕事ではあるが、検証にはまだ着手すらしていない」と評しています。なお、この批判の相手と、「行動は何が違うか」の章から引用してきた検証グループは、同じ系譜の研究チームです。そのため、このページで並べた「行動の記述」と「統計の不在」は、同じ対象をめぐる賛否として読むのが正確です。
まとめると、この軸は、質問紙で測れる性格の特徴としては確認されていません。一方、原典と観察報告は、「目標と道筋のどちらを固定するか」「達成の後に何を感じるか」を記述しています。レイニン自身も、「あまり研究されていない」と書いていた軸です。そのため、見分けるのに使うなら、目標と過去の語り方を、時間をかけて観察する必要があります。
07使うときの注意
最後に、この軸を使うときの注意を3つにまとめます。
名前を評価の言葉として読まないこと。この軸は、レイニン自身が名前と中身がよく合っていると認めた、珍しい軸です。それでも、「戦略=計画的で賢い、戦術=その場しのぎ」という優劣の読みは誤りです。戦術の側が目標を固定しないのは、状況ごとにいちばんよい対処を選び続けるための構えです。戦略の側が道を固定しないのは、目標に着くためならやり方を変えられる柔軟さです。
どちらの側にも、成果を挙げる人とそうでない人が同じようにいます。軍事の才能の話でもありません。アウシュラの呼び名(庇護者/外交官)も同じで、気前のよさや社交の技術の優劣ではなく、支援と情報の出し方の型を指しています。
この軸だけでタイプを決めないこと。戦術/戦略は、タイプから導かれる15軸の1つです。逆に、この軸1つからタイプは決まりません。8タイプずつの大きなまとまりなので、「目標を立てるのが苦手だから戦術の側」という自己認識だけでは、候補はまだ8タイプ残っています。また、目標を立てない理由は、この軸の外にいくらでもあります。
実証の水準を混ぜないこと。「見分け方と実証研究」の章で見たとおり、この軸には、大きな質問紙調査で否定的な検定結果があります。原典の記述と観察報告は読み物として豊かですが、「統計的に確認された性質」として引用できる段階にはありません。
08両極のタイプ一覧
両極の8タイプずつを、一覧で再掲します。この軸はクアドラをまたいで分かれ、双対の2人は必ず両側に分かれます。自分のタイプがどちらに入っているかを確かめたら、目標と道筋の語り方、言い切りの強さや情報源の扱いに心当たりがあるかを照らし合わせます。「これからどうしたい?」への答えが、目的地と次の一手のどちらから始まるかが観察点です。合わないと感じたら、それはタイプの判定そのものを見直す手がかりにもなります。二分法は、判定の答え合わせにも使えるからです。
引用索引
本文で引用した出典を、登場した順にまとめます。引用の日本語は原文から訳出したものです。
- [1]グリゴリー・レイニン『Socionics: Typology. Small Groups.』(2010)第III部 本文へ
- [2]グリゴリー・レイニン『Socionics: Typology. Small Groups.』(2010)第III部 本文へ
- [3]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第3部(№3)(1998年) 本文へ
- [4]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第3部(№3)(1998年) 本文へ
- [5]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第3部(№3)(1998年) 本文へ
- [6]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第3部(№3)(1998年) 本文へ
- [7]サンクトペテルブルクのソシオニクス作業グループ『レイニン特徴の中身: 実地研究の結果』(原題:Наполнение признаков Рейнина: результаты практических исследований、2003) 「戦術/戦略」の節 露語の報告。公開元の dynamicsocionics.ru は閉じており、Internet Archive の写しで読める。英訳は Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」 出典リンク 本文へ
- [8]サンクトペテルブルクのソシオニクス作業グループ『レイニン特徴の中身: 実地研究の結果』(原題:Наполнение признаков Рейнина: результаты практических исследований、2003) 「戦術/戦略」の節 露語の報告。公開元の dynamicsocionics.ru は閉じており、Internet Archive の写しで読める。英訳は Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」 出典リンク 本文へ
- [9]サンクトペテルブルクのソシオニクス作業グループ『レイニン特徴の中身: 実地研究の結果』(原題:Наполнение признаков Рейнина: результаты практических исследований、2003) 「戦術/戦略」の節 露語の報告。公開元の dynamicsocionics.ru は閉じており、Internet Archive の写しで読める。英訳は Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」 出典リンク 本文へ
- [10]ヴィクトル・タラノフ「レイニン特徴の実験的研究」『ソシオニクス新聞』誌 №07-08(2003年) 本文へ
