ソシオニクスの15の二分法 · 第14軸(リング系の軸)
プロセス/結果
判定ルール: 自我・超自我のリング進行がNe→Ti→Se→Fi…またはNi→Te→Si→Fe…ならプロセス、Ne→Fi→Se→Ti…またはNi→Fe→Si→Te…なら結果
プロセス/結果は、ソシオニクスにある15の二分法のうち14番目の軸です。16タイプを8タイプずつに分けます。
プロセスの側は仕事の中に入り込んで一つを深く進め、中断した作業へ戻ることが苦手だとされます。
結果の側は仕事の外に立って複数を並行させ、区切りと集計で流れを追うとされます。
原典では「左/右」という名前で呼ばれた軸ですが、この左右のラベルは後の研究者の間で正反対に使われてきました。政治的な左右とも無関係です。海外資料では、グレンコの用語である「進化/退行」の名でも呼ばれます。この記事では、この軸を提案したレイニン(Grigory Reinin)と創始者アウシュラ(Aushra Augustinaviciute)の原典、後年の研究者グレンコ(Victor Gulenko)の整理、検証研究を引用しながら、両極が何で分かれ、どう違って見え、どう見分けるのかを解説します。
01何で決まるか
まず、どちらの極に入るかは性格診断の点数ではなく、タイプのモデルA(8つの情報要素の配置図)から機械的に決まります。16タイプが2本の「社会進歩のリング」のどちらに属するかで分かれる軸です。
- プロセス: ILE・ILI・SEI・SEE・EIE・EII・LSE・LSI
- 結果: ESE・ESI・SLE・SLI・LIE・LII・IEE・IEI
数理的には、この軸は直観/感覚×論理/倫理×合理/非合理という3つの基本軸の掛け合わせで、外向/内向とは独立です。どちらの極にも、外向と内向が4タイプずつ入ります。また、互いを補い合うとされる双対関係は、必ず同じ極に入ります。ILEの双対はSEIで、どちらもプロセス。SLEの双対はIEIで、どちらも結果です。それぞれのリングは、各クアドラから1組ずつ、計4組の双対ペアでできています。この軸と最終回の肯定/否定は、どちらもリング系の軸です。
02レイニンはどう定義したか
この軸の出どころは、1980年代にレイニンが行った数学的な仕事です。レイニンは、ユング由来の4つの基本二分法を掛け合わせると、16タイプを8対8に割る二分法が全部で15本作れることを示しました。数学的に軸が作れることと、その軸に心理的な中身があることは別問題です。レイニンは2005年の著書(英訳2010年)で、この軸をこう記述しています。なお、原典の「左/右」というラベルは、後述する取り違えの歴史があるため、名前そのものを話題にする箇所を除き、引用の中も本記事の表記「プロセス/結果」に置き換えています(アウシュラとレイニンの用法では左=プロセス、右=結果です)。
この特性は、タイプが2つの「社会進歩のリング」のうちの1つに属しているという事実を反映する。プロセスの「リング」は、未来および状況の潜在的機会に焦点を当てている。結果の「リング」は、過去および「結果の総括」に焦点を当てている。
「未来と潜在的機会/過去と総括」という対です。検証グループによる「中に立つ/外に立つ」という観察とも重なります。生活様式のレベルの対比もあります。
8つのプロセスタイプと8つの結果タイプへの分割が生活様式に対応していることもまた指摘されている。一方の場合(結果タイプ)は集団主義、共同体主義であり、他方(プロセスタイプ)は個人主義、極端な場合には禁欲主義である。人類の歴史において、これらすべての生活様式は等しい数だけ存在してきた。
レイニンはこの生活様式の対比に、読んだ小説からの連想を書き添えています。セルビアの作家パヴィチの小説に出てくるアトス山の修道院には、すべてを共有して共に暮らす共同生活者と、個々の庵で暮らす隠遁者という2つの伝統が並立している—「これら2つの傾向は歴史において並行してきた。ただ時々、一方または他方が優勢になっただけである」。チームでしか働けない人々と、オフィスの静寂の中でひとりで働く人々の対比だ、というのがレイニンの読みです。働き方の好みとしての読みであって、所属する組織の規模の話ではありません。
03アウシュラはどう記述したか
創始者アウシュラは1998年の連載で、この軸を2本のリングの回り方の違いから説明しようとしました。ただし、その筆致は15本の中でも際立って慎重です。
私見では、この所属は人間の思考様式にある一定の—まだかなり捉えがたい—痕跡を残す。
そのうえでアウシュラは、一方のリングの知性は物質的な再生産—物の有用な性質を考え、労働で使える形にすること—に向かい、もう一方のリングの知性は人間そのもの—人々の心身の特性を考え、鼓舞し育てること—に向かうのではないか、という仮説を立てます。しかし節の締めくくりは、はっきりした留保です。
これらすべては研究を要する。今のところ確実なのは、両者の間に何かにおいて本質的な違いがあること、そしてその基礎にIMの反対の方向があるということだけである。
人々の具体的な振る舞いや周囲との関係にどう反映されるかは、今のところほとんど何も分かっていない、とも書かれています。創始者がここまで留保を重ねた軸は、15本の中でも珍しいものです。ラベルの取り違えとあわせて、この軸の記述が当時まだ固まっていなかった事情がうかがえます。それでも、具体的な仮説がひとつだけ添えられています。
プロセスタイプは大きな家庭好きで、自分の家、自分の領域で客を喜んで迎える—出かけて他人を訪ねるよりも。結果タイプは逆に、自分のところに迎えるよりも他人のところに行くのを通常は好む、と仮定されている。
招く側と訪ねる側という、生活の手触りのある観察です。ただし、検証されていない仮説と明示されています。「プロセス側は招く」という仮説は、レイニンの「結果側が集団主義」という整理と一見向きが逆に見えます。レイニンの言う集団主義は働き方の話で、こちらは客のもてなし方の話なので、切り口が異なります。創始者自身が「確実なのは違いがあることだけ」と書いた軸に、後年の研究者たちがどう中身を与えたかが、この軸の読みどころです。
04行動は何が違うか
では、日常の行動としては何が違って見えるのでしょうか。2000年代にサンクトペテルブルクの研究グループが、タイプ判定済みの被験者を集めてこの軸の発現を観察する検証を行いました。その報告(英訳がwikisocionに「Reinin Dichotomies: Study Results」として公開されています)は、両極の違いを、仕事の「中」に立つか「外」に立つかとして記述します。
プロセスタイプは自分を「プロセスの中」に知覚し、そこへ「没入」し、その一部になる。このため、複数のプロセスを同時に扱うことが非常に難しい。プロセスを全体として、切り分けられない一続きのものとして知覚する。切り替えせずに最後まで辿ろうとし、いったん離れた作業へ戻ることが難しい(彼らにとって、離れた地点へ戻って続きをやることは、最初から始め直すことに等しい)。
結果タイプは自分を「プロセスの外」に置き、そこから切り離す。彼らにとって状況やプロセス(自分がしていること)は、外から管理する外的な何かである。このため結果タイプは複数の課題を同時に扱い、それぞれの始まりと終わりを追跡できる。中間と最終の集計をする傾向があり、プロセスの終点—結果—に方向づけられている。自分の関わる物事にはっきりした結果が見えないと、不快を覚える。
同じ報告は、ここから枝分かれする違いをいくつも挙げています。要点を地の文でまとめると、こうなります。
- 並行作業。プロセスの側はひとつに没入するため並行が難しい。結果の側は複数のプロセスの始点と終点を「外から」見張れるため、並行が苦にならない。
- 中断と再開。プロセスの側にとって、中断した作業への復帰は「最初からやり直し」に近い。結果の側は集計で位置を把握しているので、途中から拾い直せる。
- 語彙。プロセスの側の話には「プロセス」という言葉そのものが頻出する。結果の側は「始まり」「終わり」「段階」「区切り」「結果」を多く使う。
- 終わりへの感情。プロセスの側には終わることそのものへの抵抗が語られる(章の区切りで止まらず、数ページ先まで読んでから閉じる)。結果の側には、終わらないことへの不快が語られる。
報告の注記は、中心は「中に立つか、外に立つか」です。「プロセス志向/結果志向」は二次的な現れだと整理しています。結果の側の集計癖は、外に立っているため流れが直接見えないことを補う道具です。プロセスの側が接続を手放さないのは、切れたら戻れないと知っているためです。「プロセスの側は完璧主義だ」という仮説は、この実験では確認されませんでした。
報告は、この軸の基盤を注意の配分に見ています。プロセスの側は、一つの主題に長く留まる注意の安定と集中が高い。結果の側は、複数の主題へ同時に配る注意の分配と切り替えが利くのではないか、という仮説です。
被験者の発言例も具体的です。プロセスの側は「何かを終えるのも始めるのも簡単ではないが、いちばん難しいのは、昔やめたものの真ん中へ戻ること」「本は章の終わりまで読んで、次の章の数ページ先まで読む…何かが終わるという考えが怖い」「ソリティアなんて始めたら大変、長いこと『はまって』しまう」「取りかかるまでが大変で、始まってしまえばあとはひとりでに転がっていく」。結果の側は「自分がジャグラーのようだ。手の中に複数の活動がある。私が把握しているのは2つの点—始まりと終わり」「物事を始めることと締めることが面白い。完成した姿を思い描くのが好きだ」「いちばん恐ろしいのは、何かがいつまでも終わらないこと」「どうして聞きながら食べたらいけないの?」と語っています。
05相手からどう見えるか
二分法では、反対側の極が「欠点を持った自分」に見えることがあります。この軸でも、互いの印象はすれ違うとされます。
結果の側からプロセスの側を見ると、ひとつの作業に沈み込み、区切りなく延々と進む人に見えることがあります。頼んだ別件がいつまでも始まらない、という形でも現れます。プロセスの側から結果の側を見ると、あれこれ手を出し、深く掘らずに「終わったことにする」人に見えることがあります。区切りのたびに集計を求められるのも、没入を切られる側には煩わしく感じられます。どちらも流れの追い方が違うだけです。没入は中からの追跡であり、集計は外からの追跡です。どちらも流れを見失わないための、別の方式です。
後年の研究者グレンコは、この軸(彼の用語では進化/退行)の観察として、結果の側に会話を突然切り上げる癖を挙げています。話を打ち切るのではなく、素早くまとめて締める、急に脇道へ逸れてまた戻る—それがプロセスの側には、無作法や関心のなさ、あるいは根に持っている印として読まれてしまう、という指摘です。ほかにもグレンコは、プロセスの側は世間の評判を、結果の側は身内の評価を重んじる、ストレスからの回復はプロセスの側の方が遅く、ひとつの過程に捕まると抜けにくい、という対比を書いています。思い込みや押しつけられた意見から素早く抜けるのは結果の側だ、ともされます。
同じ「仕事が終わらない」という悩みも、プロセスの側では「離れたら戻れなくなった」、結果の側では「区切りが見えない」という別の形を取ることになります。なお、この軸は双対ペアが必ず同じ極に入る軸です。没入型の2人組と並行型の2人組ができる、という並びになります。
06見分け方と実証研究
見分けるには何を手がかりにすればよいでしょうか。実用的な観察点は4つあります。
第一に中断への反応。作業を途中で止められたとき、後で途中から拾えるか、「最初からやり直しになる」と感じるか。第二に並行の数。同時に走らせている物事の数と、その把握のしかた(没入しているひとつか、始点と終点で見張る複数か)。第三に語彙。「プロセス」を多用するか、「区切り」「段階」「結果」で話すか。第四に読書の順序。頭から順に読まないと気が済まないか、結末や頁の下段を先に見てしまうか。この最後の観察は、グレンコが思考の進み方の対比として書いたものです。
演繹的思考では、単純で自明な言明(公理、公準)の集合から、帰結が必然的に導かれる(定理)。推論は単純から複雑への方向に流れる。それゆえ進化タイプは、状況を頭の中で複雑化する。帰納的思考では推論は逆向きに進む。複雑な現象を観察し把握して、帰納的思考はそれを、細部を削ぎ落とした一般化された図式やモデルへ還元する。退行タイプは、理解するために状況を分解し単純化する。推論は複雑から単純への逆順に流れる。
引用中の「進化」はプロセス側、「退行」は結果側にあたるグレンコの用語です。細部を積んで複雑化しながら進むか、まず図式に単純化してから入るか。グレンコは読書の例も挙げています—本の結末や頁の下段を先に見てしまうのは結果の側で、逆順に読んでも新鮮さは損なわれず、むしろ取り込みがはかどるのだそうです。
ただし、この軸を単独のテストで測ろうとした研究は、否定的な結果を出しています。心理学者タラノフ(Viktor Talanov)は2003年、合計1,800人超の大規模標本で、レイニンの15軸に質問紙上の実体があるかを検定しました。
我々のシリーズの6つの実験のいずれにおいても、レイニン特徴に心理学的内容は検出されなかった。すべての実験において、レイニン特徴の心理学的な内容的充実の確からしさに関して、帰無仮説が裏づけられた。
プロセス/結果は、職業選択(1,446人)との関連が一見境界(P=0.05)に見えた軸です。しかし原文自身がこれを標本の偏りが作った見かけ(アーティファクト)と判定しています。質問紙240問との相関も、基本4軸に遠く及びません。
タラノフの実験(2003年・447人)。点線(0.91)を下回る値は、偶然のばらつきと区別できない。
数値はタラノフ「レイニン特徴の実験的研究」(2003年、ソシオニクス新聞 №07-08)表3より
340問版の検定でも同じ構図でした。ソシオニクスの特徴ではない「善意・謙虚—攻撃性・貪欲」という因子が7.28と、レイニンの派生特徴(0.24〜0.37)よりはるかに強く質問と結びついていました。
ただしタラノフは、結論の最後でこの軸を名指しして、追試の筆頭に挙げています。
我々の見解では、これらの追加研究における最優先の注意は、実践心理学者の一部で顕著な人気を博しているレイニン特徴「動的─静的」および「右─左」に向けられるべきである。
引用中の「右─左」がこの軸です。つまり否定的な結果を出した本人も、実務家の間での使われ方を踏まえて、この軸を静的/動的と並ぶ、決着をつける価値のある追試候補と見ています。タラノフは同じ論文で、ペテルブルクの検証グループの観察研究についても「仮説を精緻にする仕事ではあるが、検証にはまだ着手すらしていない」と評しており、04で引いた「中/外」の観察も、この宿題の途中にあります。
つまり現状はこう整理できます。質問紙で測れる「性格の強さ」としては確認されていません。境界に見えた数字も、原文がアーティファクトと判定しています。一方、観察報告と後年の整理は「中に立つか外に立つか」「中断への反応」を記述しており、批判者自身が追試の筆頭に数えています。判別に使うなら、作業の止め方と再開のしかたを時間をかけて観察する必要があります。
07使うときの注意
最後に、この軸を使うときの注意をまとめます。
ラベルの取り違えに注意すること。この軸の「左/右」というラベルは、資料系統によって正反対に使われています。アウシュラとレイニンはプロセスの側(ILE・SEIなど)を「左」と呼びましたが、グレンコとプロコフィエワは同じ側を「右」と呼びます。英語圏のまとめでは、同じタイプの集合が資料によってLeftともRightとも書かれることになります。検証グループの報告も冒頭でこの取り違えに注意を促し、「名前が特性を決めるわけではないので、名前の変更は些細なことだが、異なる分類に出会ったときのために記しておく」と書いています。当サイトが中立な「プロセス/結果」を見出しに使っているのは、この混乱を避けるためです。海外の資料で「左/右」を見かけたら、どちらの用法か必ず確かめてください。政治的な左右とは無関係です。
この軸単独でタイプを決めないこと。プロセス/結果はタイプから導出される15軸のひとつであって、逆にこの軸ひとつからタイプは決まりません。8タイプずつの大きな束であるうえ、創始者自身が「確実なのは違いがあることだけ」と書いた軸です。並行作業が苦手という自己認識は、経験や環境にも左右されます。
実証の水準を混ぜないこと。06で見たとおり、P=0.05という見かけの数字は原文自身がアーティファクトと判定しています。観察報告と後年の整理は読み物として豊かですが、「統計的に確認された性質」として引用できる段階にはありません。本記事が「〜とされます」という書き方を続けているのは、そのためです。
08両極のタイプ一覧
両極の8タイプずつを一覧で再掲します。この軸は双対ペアが同じ極に入り、各クアドラが2タイプずつ両側に分かれる並びです。自分のタイプがどちらの束に入っているかを見たうえで、中断への反応と並行作業の数に心当たりがあるかを確かめてみてください。「聞きながら食べる」ことの可否のような小さな癖にも出るとされます。合わないと感じたら、それはタイプ判定そのものを見直す手がかりにもなります。二分法は、判定の答え合わせにも使えるからです。
引用索引
本文で引用した出典を、登場した順にまとめます。引用の日本語は原文から訳出したものです。
- [1]グリゴリー・レイニン『Socionics: Typology. Small Groups.』(2010)第III部 本文へ
- [2]グリゴリー・レイニン『Socionics: Typology. Small Groups.』(2010)第III部 本文へ
- [3]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第4部(№4)(1998年) 本文へ
- [4]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第4部(№4)(1998年) 本文へ
- [5]アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ「レイニン特性理論」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 第4部(№4)(1998年) 本文へ
- [6]Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」(コミュニティ編纂、2026-09-01閲覧) 本文は英語ページからの訳出。2007年公表のサンクトペテルブルク検証グループ報告の英訳 出典リンク 本文へ
- [7]Wikisocion「Reinin Dichotomies: Study Results」(コミュニティ編纂、2026-09-01閲覧) 本文は英語ページからの訳出 出典リンク 本文へ
- [8]ヴィクトル・グレンコ「思考の諸形式」『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 №4(2002年) 引用は英訳からの重訳 本文へ
- [9]ヴィクトル・タラノフ「レイニン特徴の実験的研究」『ソシオニクス新聞』誌 №07-08(2003年) 本文へ
- [10]ヴィクトル・タラノフ「レイニン特徴の実験的研究」『ソシオニクス新聞』誌 №07-08(2003年) 本文へ
