機能の 符号ソシオニクスの +と −
同じ情報要素の2通りの現れ方を「+」と「−」で分ける印。グレンコが入れ、イェルマークとストラティエフスカヤがそれぞれの意味を与えた。
機能の符号は、モデルの機能に付ける「+」と「−」の印です。同じ情報要素でも、現れ方が2通りに分かれることを表すために使われます。研究者によっては、機能の記号とも呼ばれます。
機能の符号を理解するには、次の5つのポイントがあります。
01符号とは何か
1つ目は、符号が分ける2つの現れ方です。
ソシオニクスでは、同じ情報要素を1番に持つタイプが2つずつあります。例えば、ILE(ENTP)とIEE(ENFP)は、どちらも1番の主導機能がNe(外向直観)です。この2つのタイプのあいだの関係を、同属関係と呼びます。
ソシオニクス研究者のグレンコは、同属の2タイプの違いを、符号で説明しています。
プラスの符号は、機能の肯定的な現れを最大にすることを表し、マイナスは否定的な現れを最小にすることを意味する。1つの機能の2つの面のこの違いは、すぐには見て取れない。それを示すために、同属の関係にあるタイプの組を順に見ていこう。こうした組では、1番目の(管理の)機能は、質はいつも同じだが、符号が違う。
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The plus sign denotes the maximization of the positive manifestation of the function, and the minus signifies the minimization of its negative manifestation. To illustrate this difference between the two sides of a single function, which is not immediately perceivable, let’s run through the kindred pairs of sociotypes. In such pairs, the first (command) function always coincides in quality, but differs in sign.
上の引用にある1番目の管理の機能は、モデルAの1番の主導機能のことです。つまり、同属の2タイプは、1番の情報要素が同じで、符号だけが逆ということです。グレンコは、+をその機能の良い面をできるだけ大きく出す側、−を悪い面をできるだけ小さく抑える側としています。例えば、2つ目のポイントで見るSi(内向感覚)では、+が居心地よく整えること、−が不快を取り除くことになります。
また、この「同属の2タイプは符号が逆」という点は、このあと取り上げる3人の研究者に共通しています。符号の意味づけは研究者ごとに違っても、この点は変わりません。
02グレンコの16の符号
2つ目は、グレンコが8つの情報要素に付けた16の符号です。
グレンコは、8つの情報要素それぞれの+と−に名前を付け、短い説明を添えています。例えば、Si(内向感覚)の+と−は、こう書かれています。
- +S(Si) ― 快適の感覚: 居心地よく身を落ち着けること、環境を自分に合わせて整えること、自分の縄張りを自立させること。職人はこうした感覚を持つ。
- −S(Si) ― 不快の感覚: 病気を治すこと、家の中の不快を取り除くこと、そして不快の中でも生き延びること。これは仲介者で、不快な両極端から離れて、ほどよい中ほどに身を置くことができる。
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+S — sensing of comfort: it means to be placed conveniently, to adjust the environment for oneself, to make your territory autonomous. The Craftsman has such a sensing. -S — sensing of discomfort: this means treating the disease or eliminating discomfort in the home, and also to survive during discomfort. This is a Mediator who can walk away from unpleasant extremes and occupy the golden mean.
上の引用にある職人はSLI(ISTJ)、仲介者はSEI(ISFJ)のグレンコの呼び名です。言い換えると、同じSi(内向感覚)でも、+は自分の周りを快適に整える方向に、−は不快を取り除く方向に働くということです。
ほかの7つの情報要素にも、同じように+と−の名前が付いています。グレンコの名前を表にまとめると、次のようになります。
| 情報要素 | + | − |
|---|---|---|
| Si(内向感覚) | 快適 | 不快 |
| Se(外向感覚) | 抵抗 | 従属 |
| Fe(外向倫理) | 肯定的な感情 | 否定的な感情 |
| Fi(内向倫理) | 赦し | 非難 |
| Ni(内向直観) | 未来 | 過去 |
| Ne(外向直観) | 展望 | 代替 |
| Te(外向論理) | 投資 | 節約 |
| Ti(内向論理) | 統一構造 | フラクタル構造 |
※グレンコ『64の肖像』理論編の16の名前を、短くしたものです。
さらにグレンコは、符号はいつも同じではなく、ときどき逆に振れてから元に戻るとも書いています。
03イェルマークの4つの特性
3つ目は、符号の意味を4つの特性で説明する見方です。
グレンコの符号に、意味の上の根拠を与えたのがイェルマークです(1994年)。その著書で、符号が機能に与える特性を4つ挙げています。
符号が心の機能に与える4つの特性、つまり品質、規模、方向、距離について、手短に説明しよう。
品質 ― 符号「+」は「肯定」、特性の肯定的な領域が能力領域で、否定的な領域が無力領域であること。符号「−」は「否定」から離れること、否定的な特性から肯定的な特性へ移ること、肯定的な領域と否定的な領域の両方が能力領域であること。
規模 ― 符号「+」は局所性、「クローズアップ」、具体性、機能の「自分の輪」の範囲での細部の詳しさ。符号「−」はグローバル性、「全景」、機能が全体に及ぶこと。
方向 ― 符号「+」は機能が責任を持つ領域の内側へ(「自分の輪を守ることへの気づかい」)。符号「−」は機能が責任を持つ領域から外側へ(ほかの「局所」への影響、「圧力」)。
距離 ― 符号「+」は「近い」心理的距離。符号「−」は「遠い」心理的距離。
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Коротко поясним четыре свойства, которые знаки придают психическим функциям - качество, масштабность, направленность и дистанция. качество — знак “+” — “позитив”, компетентность в положительной области свойств при некомпетентности в негативной области; знак “—” — уход от “негатива”, от отрицательных свойств к положительным, компетентность в позитивной и негативной областях; масштабность — знак “+” — локальность, “крупный план”, конкретика, детализация в пределах “своего круга” функции; знак “—” — глобальность, “общий план”, всеобщность функции; направленность — знак “+” — внутрь области ответственности функции (“забота о защите своего круга”); знак “—” — наружу из области ответственности функции (влияние, “давление” на другие “локальности”); дистанция — знак “+” — “близкая” психологическая дистанция; знак “—” — “далёкая” психологическая дистанция.
言い換えると、+は自分の近くの狭い範囲を守る向きで、−は遠くの広い範囲へ働きかける向きということです。品質・規模・方向・距離の4つのうち、方向と距離は規模から出てくる特性だと、イェルマークは書いています。
上の引用にある能力領域は、その機能を使いこなせる範囲、無力領域は不得手な範囲のことです。
一方、品質の特性では、+は良い面だけが能力領域で、悪い面は無力領域、−は良い面と悪い面の両方が能力領域とされています。グレンコの「良い面を大きく出す」と「悪い面を小さく抑える」に近い分け方と読めます。
04ストラティエフスカヤのエボリューションとインボリューション
4つ目は、符号を「エボリューション」と「インボリューション」(進化と退行)として読む見方です。
ストラティエフスカヤは、+をエボリューション、−をインボリューションと呼び、二分法の1つとして説明しています。2つの立場の違いを、こう書いています。
古いもの(傷んだもの、正しくないもの、もろいもの、不公正なもの、先のないもの)を壊し、その跡に新しいもの(正しいもの、丈夫なもの、公正なもの…)を建てる。これがインボリューションタイプの立場である。「壊さなければ、建てられない」。
古いものにあったもの、いまあるもののうち最良のものをすべて残し、それを新しいものへ移す。これがエボリューションタイプの立場である。「新しいものを作らないうちに、古いものを壊すな」。
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Разрушить старое (ветхое, неправильное, непрочное, несправедливое, бесперспективное), чтобы на его месте построить новое (правильное, прочное, справедливое...) – позиция ИНВОЛЮТОРА: «Не сломаешь, не построишь». Сохранять всё лучшее из того, что было и есть в старом и перенести его в новое – Позиция ЭВОЛЮТОРА: «Не ломай старого, не создав нового».
つまり、+はいまあるものを残して積み上げる進め方、−は作り直してより良い代わりを探す進め方ということです。ストラティエフスカヤは、1番の要素に+が付くタイプをエボリューションタイプ、−が付くタイプをインボリューションタイプと呼んでいます。
また、ストラティエフスカヤがエボリューションタイプとして挙げるタイプは、16のタイプを8つずつに分けるレイニン特性のうち、プロセス/結果のプロセスの側のタイプです。プロセスの側は、ILE・SEI・EIE・LSI・SEE・ILI・LSE・EIIの8タイプです。インボリューションタイプとして挙げるタイプは、結果の側に入ります。
05研究者による符号の違い
5つ目は、研究者によって符号の付け方が違うことです。
3人の研究者は、同属の2タイプで符号が逆になる点では一致しています。一方、2タイプのどちらに+を付けるかは、情報要素によって一致しません。16タイプの1番の符号を、グレンコとイェルマークで並べると、次のようになります。
| 1番の要素 | タイプ | グレンコ | イェルマーク |
|---|---|---|---|
| Ne(外向直観) | ILE(ENTP) | + | + |
| Ne(外向直観) | IEE(ENFP) | − | − |
| Ti(内向論理) | LSI(ISTP) | + | + |
| Ti(内向論理) | LII(INTP) | − | − |
| Se(外向感覚) | SEE(ESFP) | + | + |
| Se(外向感覚) | SLE(ESTP) | − | − |
| Fi(内向倫理) | EII(INFP) | + | + |
| Fi(内向倫理) | ESI(ISFP) | − | − |
| Si(内向感覚) | SEI(ISFJ) | − | + |
| Si(内向感覚) | SLI(ISTJ) | + | − |
| Fe(外向倫理) | EIE(ENFJ) | − | + |
| Fe(外向倫理) | ESE(ESFJ) | + | − |
| Ni(内向直観) | ILI(INTJ) | − | + |
| Ni(内向直観) | IEI(INFJ) | + | − |
| Te(外向論理) | LSE(ESTJ) | − | + |
| Te(外向論理) | LIE(ENTJ) | + | − |
※グレンコの欄は『64の肖像』16タイプ編、イェルマークの欄は『人を理解することを学ぶには』の付録2(ロスランキナとの共著)によります。ストラティエフスカヤが例に挙げた9タイプ(SLI・SEI・LII・LSI・IEI・ILI・ESI・EII・SEE)は、イェルマークの欄と全部一致します。
表の上の半分、Ne(外向直観)・Ti(内向論理)・Se(外向感覚)・Fi(内向倫理)の4つでは、2人の符号が一致します。一方、下の半分のSi(内向感覚)・Fe(外向倫理)・Ni(内向直観)・Te(外向論理)の4つでは、+と−が逆になります。
1番以外の機能も含めた8つの符号は、次のカードで確かめられます。
※ストラティエフスカヤの決まりでは、エボリューションタイプは1・3・6・8番が+で、インボリューションタイプはその逆です。この決まりをプロセスの側の8タイプに当てると、符号はイェルマークと全部同じになります。
この違いは、イェルマーク自身も書いています。
心の機能の符号の意味論をシステムとして根拠づけたのはイェルマークV.D.とセニュークG.B.(1994年)であり、それはV.V.グレンコによる符号の解釈、とりわけ近年の解釈とはいくらか異なる。
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Системное обоснование семантики знаков психических функций выполнено Ермаком В.Д. и Сенюк Г.Б. (1994г.) и несколько отличается от толкования знаков В.В.Гуленко, особенно в последние годы.
言い換えると、イェルマークの符号は、グレンコの符号と同じ印を使いながら、解釈が違うということです。
当サイトでは、この食い違いを、+と−が分けているものの違いとして読んでいます。グレンコの+は機能の良い面の出し方、イェルマークの+は近く狭い範囲、ストラティエフスカヤの+は積み上げる進め方です。分けているものが違えば、同じタイプのどちらに+を付けるかも変わり得ると考えられます。
06機能の符号の成り立ち
符号を入れたのはグレンコで、1991年のことです。イェルマークは、著書の注にこう書いています。
心のTIMモデルにおける心の機能の符号は、1991年にV.V.グレンコが導入した。
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Знаки психических функций в модели ТИМ психики введены В.В.Гуленко в 1991г.
その3年後の1994年に、イェルマークが符号の意味を4つの特性で根拠づけました。ストラティエフスカヤは、のちに符号をエボリューションとインボリューションの二分法として読み、クアドラが入れ替わる順番の説明にも使っています。
このように、機能の符号は、1人の研究者が完成させた理論ではありません。グレンコが入れた印に、ほかの研究者がそれぞれの意味を与えてきたものです。研究者ごとの考え方の違いは、研究者比較でも扱っています。
07引用索引
- [1]Gulenko『64の肖像』(原題:Psychological Types: Why Are People So Different? 64 Portraits in Socionics、2019年)理論編「モデルGの機能の記号」 本文へ
- [2]Gulenko『64の肖像』(原題:Psychological Types: Why Are People So Different? 64 Portraits in Socionics、2019年)理論編「モデルGの機能の記号」 本文へ
- [3]Yermak『人を理解することを学ぶには』(原題:Как научиться понимать людей、2005年)第5章 5.2「心のTIMモデルにおける心の機能の符号」 本文へ
- [4]Stratiyevskaya『心理的特性 進化-退行』(原題:Психологический признак ЭВОЛЮЦИИ – ИНВОЛЮЦИИ、2017年)進化型と退行型の動機 本文へ
- [5]Yermak『人を理解することを学ぶには』(原題:Как научиться понимать людей、2005年)第5章 注 本文へ
- [6]Yermak『人を理解することを学ぶには』(原題:Как научиться понимать людей、2005年)第5章 注 本文へ
