研究者ごとのデルタの記述
グレンコが 書いた デルタクアドラ
グレンコは、デルタクアドラを、日常で人道を実践し、小集団が集まった中規模の集団で安らぐ人々として書いています。社会の進歩への希望は科学から人の道徳の感覚へ移り、協力が競争に勝る社会になる、という像です。
01宣言ではない人道主義
グレンコは、デルタの価値の礎石を、こう書いています。
その礎石は、宣言的ではない、本物の人道主義である。この概念の背後にあるものは、βの社会タイプ指導者(Mentor)とδの社会タイプ人道家(Humanist)の比較によって明らかになる。(中略)人道家については、彼が成功した公的な説教者になることはありそうにない。(中略)しかし日常的事柄においては、彼は他のいかなる社会タイプよりも、定言命法 ― 隣人に対して自分が望むことをせよ ― に近い。
02科学より道徳の感覚
デルタの社会での科学の位置は、未来の予想として書かれています。
δクアドラには、産業主義の段階を支配した科学的な態度はない。社会進歩の原動力としての科学への希望は去り、希望は人間自身の道徳的感覚に置かれる。δは、アメリカのγ映画が未来について満載しているロボット、クローン、ミュータントなどの科学的生産物の世界とは完全に異なるものとなろう。科学的発見の流れは尽きるであろう。
- デルタの社会では、進歩への希望が、科学から人自身の道徳の感覚へ移る
- 産業の時代のような科学への態度はない
- 科学による新しい発見の流れも尽きると、グレンコは予想している
- デルタの未来は、ロボットやクローンが並ぶ世界とはまったく別のもの
引用のδはデルタ、γはガンマで、γ映画はグレンコがガンマの価値観に結びつけた映画です。
03小集団が集まる暮らし
グレンコは、デルタの人々の生活の組み立て方を、こう書いています。
δの社会タイプは穏健な集団主義によって結ばれている。彼らは時の試練を経た伝統への志向を堅持する。彼らの生活は、小集団の体系として存在する中規模集団の枠内で組織される。
- デルタの人々は、穏健な集団主義で結ばれている
- 長く続いてきた伝統を大事にする
- 生活の単位は、小集団が集まった中規模の集団
この中規模の集団で得られるものを、グレンコは続けてこう書いています。
この社会においてこそ、最高レベルの精神的安らぎを達成することができる。双対関係と居心地の良い家庭だけでは、人が人生の充実を体験するには明らかに不十分である。
- デルタの人々は、この中規模の集団の中でこそ、最高の精神的な安らぎを得る
- 双対関係と居心地のよい家庭だけでは、人生の充実には足りない
- 家庭の外に、小集団どうしのつながりが要ると読める
04協力が競争に勝る
グレンコは、デルタの未来像を短くまとめています。
未来は、共通の目標によって結ばれた小集団のためのものとなろう。この場合、協力は競争に勝るであろう。
- デルタの未来は、共通の目標で結ばれた小集団のもの
- そこでは、協力が競争に勝ると予想している
- 03と合わせると、目標を共有する小集団が集まり、中規模の集団になると読める
05所有から存在へ
グレンコは、論文「クアドラ価値」で、デルタの社会へ向かう人々の態度の変化を、フロムの考えに重ねてこう書いています。
20世紀において、心理学者にして哲学者のエーリッヒ・フロムはγからδへの移行について多くを書いた。(中略)この苦痛なプロセスを、彼は所有(中央性)から存在(周辺)への態度の変化として想像した。(中略)それは、δクアドラの非暴力的、協力的、生態学的社会となろう。
- デルタの社会へ向かう人の態度は、所有を重んじることから、非暴力的に生きることへ移ると読める
- グレンコは、この変化をフロムの「所有から存在へ」に重ねる
- その社会は、非暴力的で協力的な、生態学的な社会になる
引用の中央性は権力や資源をめぐる競争に適応する姿勢、周辺はその競争を避ける姿勢を指します。グレンコは、ガンマを中央性の側、デルタを周辺の側に置いています。
06穏やかな下り坂
デルタの段階の終わり方は、クアドラが交替する循環の中で説明されています。
第4クアドラは穏やかな性格と、人生に対する冷静な視点を備えている。(中略)第4クアドラの降下は、安心した老年のようである。すなわち快適で、急な落下がなく、人々は健康で活力ある感じがする。それゆえ、減衰はほとんど感じられない。それでもなお、それは深まり、最終的には苦悶 ― 通常の生活リズムにおける一貫性の鋭い違反と過去の達成への関心の喪失 ― に至る。
- デルタは、穏やかな性格と、人生への冷静な見方を持つ
- デルタの段階の下り坂は、安心した老年のように快適で、急な落ち込みがない
- 衰えは、ほとんど感じられないまま進み、最後には苦悶に至る
- 苦悶は、生活のリズムが鋭く乱れ、過去の達成への関心を失うこと
上の引用にある第4クアドラは、デルタのことです。
グレンコとは
ヴィクトル・グレンコは、キエフの人道主義ソシオニクス学派の創設者で、心をいくつものレベルからなる体系として考えた研究者です。
- 1つのモデルだけで説明せず、複数のレベルに分けて記述する
- そのため、デルタの記述も、人の価値観から、社会の未来像と歴史の循環まで広がっている
ほかの研究者が書いたデルタクアドラ
グレンコが書いたほかのクアドラ
引用索引
- [1]Gulenko『64の肖像』(2019)クアドラ論 本文へ
- [2]Gulenko『64の肖像』(2019)クアドラ論 本文へ
- [3]Gulenko『64の肖像』(2019)クアドラ論 本文へ
- [4]Gulenko『64の肖像』(2019)クアドラ論 本文へ
- [5]Gulenko『64の肖像』(2019)クアドラ論 本文へ
- [6]Gulenko「クアドラ価値—社会的不平等の心理学的ルーツ」(原題:Квадральные ценности. Психологические корни социального неравенства)『ソシオニクス、メントロジー、パーソナリティ心理学』誌 №106(2000年) 本文へ
- [7]Gulenko『64の肖像』(2019)クアドラ論 本文へ
